2011/10/05

とある街のピザ屋が閉店した

まぁ、何のヒネリもネタもなく、ただそれだけの話。


北海道函館市にある、ピザ専門の店「アリタリア」というお店が9月末で閉店となりました。
創業45年、店主の爺さんがずーーーと一人でやってました。
若い頃はよく行ったなぁ…もちろん昔から爺さんではありませんでしたがw

45年もやってりゃいわゆる老舗ですよね。まぁ…老舗…うん、いろんな意味で合ってる(笑
震災で被害にあった建物…ではありません。

ピザなんてもちろん函館になかったころ。
この店主、六本木の有名店ニコラスで
修行したんだそうです。

ニコラスってのは日本のピザ発祥のお店。
1954年オープンですから今年で57年。
四角い本牧ピザで超有名なIGが1958年
オープンで今年53年目。
このアリタリアが今年で45年。

どういうことかわかりますね。


昭和的オサレ飲食店臭全開の店内
当時の函館というのは、北洋漁業と造船でとっても景気が良くて
「大門」という繁華街を漁師や船主、それに関係する商店などの
 旦那衆が札ビラ切って遊び歩いておりまして。

ワタシも小さいころ、見も知らぬ漁師風のおっさんから
「ぼんず、おめめんこいなぁ、ほれ小遣いやるはんで」
(おお坊や、アナタはなんと愛らしい。お小遣いをあげましょう)
と板垣退助や伊藤博文の肖像画の書かれた日本銀行券を
頂いたことも1度や2度ではありませんでした。

決して自慢ではありませんがかわいいはジャスティス!!愛らしさは罪!!
「ジスイズ・ピッツァ!」と持ってくる無用に陽気な爺w

ま、そんなことはどうでもいいのですが。

そういうイケイケな世情の中で生まれた
一軒のピザ屋さんが45年間紆余転変の末に
閉店をしました、ってだけなんですけど。

この店主の爺が実にユニークというか
変わってるというか、ちょっとアレな人というか

ピザ作りながら何事かピザに囁いてたり。
店内のBGMと一緒になって歌を歌ったり
(もちろんユニークな創作歌詞で)
なんというかいろいろ愉快な方で。

店に入るとかなり待たされて。爺が全部一人でやってるのもあるけれど、テイクアウトの
注文をこなすのに時間がかかって店内のお客は放置プレイ状態(笑
そのくせ注文で「うーん…」なんて迷ったりすると怒るし(爆

ようするにフリーダムで我がままな爺で。

でもキニシナイw
っていうか、あんま気にならない。
というよりもそれを気にするような客はここには来てはイケナイ(笑

あんま店内の清潔さとかインテリアの洗練とか求める人も 帰ってください的な。
なんせトイレの水とか高い確率で流れませんし(爆
さすがにゴキさんまでは目撃したことはありませんでしたが、見ても不思議ではないレベルw

だが細かいことは気にするな。

爺さんの歌う変な歌を聴きながら、あまり広くない店内におじいさんが捏ねるピザの粉が舞って
あまりキレイじゃない窓から差す光にうっすらとけむったような空気の中でなんだか不思議な
時間が過ぎるのを楽しめる人だけが、このお店の本当の価値を知ることができる、みたいな。

でもまぁそんな上等なもんでもないんですけどね、ぶっちゃけ(笑
なんか面白れぇ爺さんだな、面白れぇ店だな、って思ったモン勝ちってことだよな。

今年あたりからしばしば臨時休業することが多くなったみたいで。
体調がすぐれなくて店を続けるのが…話は聞いてたんですけどね。
その報せを聞いて、フーンとうとう閉めるのか。ぐらいに思ってただけなんですけど。

実際、閉まったと聞いたらなんだか急にしんみりとしちゃいましたw

またひとつ無くなってしまったなぁとか。
まぁお店の写真を見ればわかるように、かつての繁華街も今では見る影も無く。
櫛の歯が抜けるように、というのがぴったり過ぎて笑っちゃうぐらい老朽店舗が取り壊されていって。
かといってそこに新しい店舗が建つわけでもなく、なくなったものはその空間のまま。

経営者の高齢化、後継者なし、商店街そのものの地盤沈下というお決まりの3点セット。
シャッター商店街の問題と同じことはたぶん全国でもれなく起きていて。

それで無くなってしまうもの、というのは
たぶん、目に見えるもの、そこにあったものだけではなくて。


ふん。ま、いいや。
達者で暮らせ、爺。

6 件のコメント:

  1. 90年代の半ばに芭蕉の生家がある伊賀上野を訪れた時にそういう大方シャッターの閉まった商店街を見かけました。わびしい状景ですよね。そういう中でも数店まだ頑張って開いてた店もありましたが。アリタリアのお爺さんも45年もやっていたなんてすごいですね! その店はお爺さんと同体のようなものだったでしょうね。窓からさす光にうっすらとけむったような店内にお爺さんの捏ねるピザの粉が舞う。。。ううん、雰囲気ある!


    こちらでも不景気が長年続いて、特に個人経営の店には風当たりがきついですね。それでも涙ぐましい努力をして持ちこたえていたのが、やっぱり2008年のリーマンショックを機にばたばたと消えて行った店が多いです。ドイツに渡ってきた頃知った思い出深い店やレストランは全部無くなってしまいました。無常を一抹の淋しさと共に感じます。本当に無くなるのは目に見えるものだけじゃないですね。

    nobさん、めんこかったのねえ。ドイツ人のお爺さんからも飴をもらったんでしたよねえ。あの北海道弁、分かりましたよ(笑) ドイツの南西部にあるバーデン⋅ヴュルテンベルク州の方言はドイツ人でも理解し難い時があるのですが、テレビのルポなどでその地方の人が話す時は下に標準語の字幕が出ますよ(笑)

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  2. めんこかった X
    めんこい   ○
    ですのでそこんところよろしく。
    今でもnobちゃん、とか言われまくりですからワタシ。飴とか普通にもらっちゃいますから。
    主に太平洋戦争前後にお生まれになったご婦人からですけど。

    …解せぬ。

    このお店は雰囲気もあるけど、その他にもいろんなものがありましたねぇw
    もう一軒初期の函館を代表するお店で「杉の子」っていうバーがあるんですけど、こちらももうホントにすごくて、いろんな意味でw
    トイレの壁にいまだに「米帝主義を打倒せよ」とかいう落書きがあったりして時空が乱れてんじゃねぇのかこれ、とか思ったり。

    そういう濃いお店がいっぱいあったんですよ函館って。
    ちゃんと後継者がいて今も続いてるお店もあるんですけど、それはそれで「なんか違うコレジャナイ」というのはあります。
    でもまぁ続けていられるというのは良いことなのでしょう。

    村上春樹の短編だったかなぁ?もしかしたら彼の翻訳の何かだったかもしれないけど。
    その中で「失われようとしている、もしくは既に失われてしまった何かについて」のような文章がありまして。
    なんだか妙にしっくりときちゃいました。ハルキくんのくせに生意気だ(笑

    でも年を取るということって結局そういうことの積み重ねに対処していくことなのかもしれません。

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  3. Ciao nobさん
    なんか淋しいよね
    ローマもね、古くからあったコーヒーカップなんて洗ってんのー??みたいなBarとかが、
    妙に小奇麗にアメリカナイズされて新装オープンしたり、昔ながらの化粧品やさんでウインドウが木で、ちょっと表に張り出してるそこに火の光が当たって
    いいなあと前を通るたびに思ってた化粧品やさん、ひげそり用のカップとブラシも売ってたっけ、それが今流行りのブランドの店になっちゃったり、なんか味気ないんですよね
    駅前の商店街って、好きなんですよ
    で、いわきでもわくわくして行ったら、歯抜け状態で閉店が多かったけ
    震災のせいだけではないと言ってましたが
    車で乗り付けるショッピングセンター、ああいうとこの回転すしもやけにまずいし、嫌いなのよねえ

    爺さん、達者でお幸せにね と祈ります

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  4. これ、junkoさんにコメントしてもらった「アリタリア(イタリア航空の方だよねw)がうんぬん…」で、奇妙なシンクロだなぁと思って書いてみた話ですw

    淋しいとかそんなことこっぱずかしくて口が裂けても言いませんが。
    As time goes byとか小賢しく利いた風なことを言うのはさらに恥ずかしい(笑

    CLANNAD(クラナド)という号泣アニメの1話の冒頭で、渚という少女が誰にともなくつぶやく言葉

    「あなたはこの街が好きですか?私はとってもとっても好きです。でも、何もかも変わらずにはいられません。それでもあなたはこの街が好きでいられますか?」

    その問いかけにその場に偶然居合わせた主人公の少年

    「見つければいいだろ。次の楽しいこととか嬉しいこととかを見つければいいだけだろ」と答えます。

    若さというのはなんて眩しいほど正しく真っ直ぐで、そしてなんと真っ当に正しく傲慢であることか(笑

    そういう風に過去から延々と繰り返してきたんでしょうね。かつてアリタリアの爺が若い頃にピザという新しいモノに出会ったように。

    寿司の話はすると長くなりますけど(笑
    寿司(江戸前)はもともとファーストフードですので、回転ずしは言わば先祖がえりですね。
    一皿100円?だっけ?の某かっぱ寿司とかは論外ですけどそれなりの経営努力の結果でそれなりの安さで出してるあちこちの回転ずしは決して悪くないなーとワタシは思ってます。
    あれが江戸前寿司か?と言われれば「絶対に違う」と言いますけどね(笑

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  5. 追記
    アリタリアってさ、イタリアの翼っていう意味なのよね
    洒落たネーミングだなあと、彼らのドンくささと比較して、いつも笑うのでした...

    Camden Town とKingscrossが開発されて
    私は、もう二度とロンドンに足を踏み込むもんか!と思ってます
    新しいものが全部悪いとは言わないけれど、
    新しいものには、そのものへの思い入れがないものが多いのです
    お金儲けだけの目的で開発されたものは、美しくないと思います。

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  6. Al Itaria でアリタリア、ですよね。
    どんくさいんですか?使ったことないのでわかりませんがイメージとしてはルフトハンザの真逆、みたいな感じ。
    チャラいおっさんがCAをナンパしつつ気安く機長やってそうですが(笑

    新しいもの、古いもの。一言では言えないのは当たり前で、外観は残ってるけど中身は一新してるものやら逆に施設はリニューアルしたけれど中身は昔ながらのやり方をしてる、とか。
    経営者の代が替わっただけでも雰囲気と言うのは変わるもんですから、結局そこの何が好きだったのか、ということになるんじゃないでしょうか。

    ワタシ正直言うとおいしいピザというのを知らないんです。食べたことがないというか。
    何をもってうまいピザというのかがわからない、ピザというモンが一体うまいものなのかどうかすら知らない。
    で、ここのピザも特にはうまいとも思いませんでした。
    でも好きだったのですここのピザ、ここで食べるピザが。

    そういうワタシのような人(他にいるのかどうか知らんけど)にとってはもしもこの店に後継者がいて、同じ味を受け継いで存続したとしても何の意味もないんですね(笑

    ワタシが足を運ぶ理由から状況から何から全部込みでここのピザ、だったわけですから。

    だから実に個人的な話なのです、そういうのは。
    普遍的な何かなど実際あり得るわけがないので(笑
    そう思います。

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